講演会「海のプラごみ汚染と私たちにできること」を開催しました
10月14日、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)主任研究員の中嶋亮太さんを講師に迎えた講演会に、会場とオンラインあわせて125名が参加しました。
講師の中嶋亮太さんの専門は生物海洋学。有人潜水調査船「しんかい6500」で海洋プラスチックごみの調査研究を行いながら、NHK「サイエンスZERO」などへの出演や、ウェブサイト「プラなし生活(lessplasticlife.com)」の運営などのアウトリーチ活動も展開している、今注目の若手研究者です。
本企画は新横浜本部会議室での会場参加とのオンライン参加のハイブリットで開催し、会場にはご家族や学生さんの姿も。中嶋さんの海洋プラスチック汚染最新報告に引き込まれた90分でした。
講師の中嶋亮太さん
海に流れ出す大量のプラスチックごみ
私たちのくらしのなかで大量に使っているプラスチック。世界で1年間に作られるプラスチックの量はおよそ4億トン以上にもなります。ごみとなったプラスチックは、ごみ集積所からあふれたり、野ざらしで埋め立てられたりして年間6000万トン以上が「管理できないプラごみ」となり、そのうち毎年50万トンのプラごみが河川を通じて海に流れ出ています。そして海流に乗って世界中の海に広がり、紫外線の影響でもろくなってマイクロプラスチックとなっていく。今やプラスチックが見つからない海はないそうです。
昨年撮影したという相模湾の海底の映像には、次々と流れてくる白いレジ袋が。軽いレジ袋も、汚れや藻がつくと重くなって海底に沈みます。
海底にたくさんあったレジ袋ですが、日本では2020年にレジ袋が有料化されました。海洋生分解性プラスチックも開発されていますが、冷たい深海ではほとんど分解しないものもあるとのこと。一方、紙やカニ殻など、もともと海にあるもので生分解性のある新しい材料の開発もすすんできているそうです。
プラスチックの影響
海に流れ出たプラスチックごみが与える影響はさまざま。昭和59年製造のチキンハンバーグのパッケージはきれいに残っていて、紫外線が届かない冷たい深海では100年、1000年と残り続けています。また、捨てられた漁具が海の生物に絡まったり、プラスチックがサンゴ礁やアマモ場を覆ってしまったり。ウミガメなどはクラゲと間違えてビニール袋を食べてしまうと思われていましたが、じつはウミガメだけでなく動物プランクトンや魚、貝類、海鳥など、じつにさまざまな海洋生物がマイクロプラスチックを食べているとのこと。研究によって、プラスチックにつく「磯のにおい(硫化ジメチル)」でエサと間違えて食べているということがわかってきたそうです。
また、私たちのくらしのなかでは洋服やカーペット、タイヤなどからもプラスチックが舞い、海にも流れていき、食物連鎖によってその影響が広がっていくという深刻な現状が語られました。
プラスチックにはさまざまな有害化学物質が含まれているため、国連ではプラスチック汚染軽減のための国際ルール作りをしていて、2025年から国際プラスチック条約がスタートする見込みだそうです。
海のプラごみを減らすために私たちができること
この海洋プラスチック汚染問題を解決するには何をすればよいのでしょうか。
世界のプラスチックごみのうち約半分が容器包装で、それらはほぼ使い捨てです。そして日本人ひとりあたりの容器包装プラスチック排出量は世界第2位(2015年)といわれているなか、「使い捨て」プラを減らすことが鍵と中嶋さんは言います。
使い捨てプラを減らすには、エコバッグやマイボトルを使うことはもちろん、外出先でお手拭きをもらわないで手を洗う、よい傘を持って長く使う、傘袋を使わず傘カバーを持ち歩く、量り売りにトライしてみる、ケーキ屋さんに行くときは前にもらった保冷剤を持っていくなど、「なるほどその手があったか!」というアイデアを教えていただきました。
また、講演後の質疑応答では、子ども向けのアプローチの工夫についての質問に対して、「家庭で自分が出すごみをとっておいて重さを量ってみる」との回答が。ごみの見える化によってごみ問題が自分ごとになる方法に納得です。
途中、インターネット環境が不安定になるトラブルもありましたが、海のプラごみ問題の最新情報と、それを自分ごととしてアクションを起こすさまざまなアイデアを知ることができた講演会でした。
会場の様子
著書にサインをしていただきました
参加者の声
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