『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』上映会を開催しました
3月20日、スペースオルタ(横浜市港北区)にて、ドキュメンタリー『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』の上映会を開催し、96名が参加しました。
映画終了後には、2014年に関西電力大飯原発の運転停止命令を下した福井地裁元裁判長の樋口英明氏が登壇し、脱原発を訴える思いなどを語りました。
「原発をとめたい」人たちを描く
ドキュメンタリー『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』は、樋口氏が退官後、地震が頻発する日本の全ての原発の脆弱性を訴える講演活動のようすや、その考え方に基づく弁護士河合弘之氏の原発差し止め訴訟の行方を追っています。
福島第一原発事故による放射能汚染で廃業を余儀なくされた、農業者たちのソーラーシェアリングによる太陽光発電への挑戦の姿も捉え、「原発をとめたい」との思いで行動するさまざまな立場の人たちの姿を記録しています。
会場の様子
会場の参加者に語りかける福井地裁元裁判長の樋口英明氏
著書へサインしながら交流
「先入観」にとらわれず 深く考え 伝えていく
映画上映後は樋口氏が登壇し、今なお廃炉作業が続く福島第一原発や能登半島地震での志賀原発の一部設備損傷などの現状も踏まえ、原子力発電所稼働の是非を考えることの大切さを伝えました。
一般的に地震の大きさは「マグニチュード」で表わされますが、観測地点での振動の激しさ・加速度を表す単位として「ガル」が使われます。建造物の耐震性能を表す単位としても用いられており、原発の耐震設計と住宅メーカーの耐震設計、主な地震を「ガル」で比較した解説や、原発事故の被害総額を提示し、生活にかかわる話であり、環境問題・防衛問題でもあるとお話しされました。
また、樋口氏は、次のようにうったえました。
「脱原発運動のもっとも強力な敵は、『先入観』です。『福島原発事故を経験しているのだから、しっかりとした避難計画が立てられているだろう』という先入観。『原子力規制委員会の審査に合格しているのだから、福島原発事故後に再稼働した原発はそれなりの安全性を備えているだろう』という先入観。『政府が推進しているのだから、原発は必要なのだろう』という先入観。なかでも、もっとも強力な敵は『原発は難しい問題だ』という先入観です」と話し、
「福島原発事故を経験し、原発の本当の危険性を知った私たちの責任は極めて重いものがあります。私たちの後に続く人々のために、自然界からの警告に真摯に耳を傾ける必要があります。皆さんにお願いがあります。映画のことを大切な人ふたりに伝えてください。そして、あなたも私の話がわかったら、あなたの大切な人ふたりに伝えてください、と広げていってください。1年後には1憶2,000万人に伝わることになります」と締められました。
質疑応答では、参加者から活発に質問が出され、樋口さんがていねいに回答されました。
参加者それぞれの立場で、先入観の怖さ、深く考えることの大切さ、いまを生きている私たちの責任などを考え、話す機会を持つことができました。
パルシステム神奈川はこれからも、組合員とともに日々の暮らしのなか忘れてはならない課題を考える機会をつくり、持続可能な社会づくりをめざします。
参加者の感想より
- 樋口元裁判長の「原因は先入観」という言葉が印象的でした。悪いのは企業や政府ではなく個人の心…その通りです。また農家の方の、良い土であれば植物は選ぶことができる(放射性物質は吸収しない)という話も感銘を受けました。
- 原発をとめた判決理由はとてもシンプル。一般市民もわかる内容じゃないといけない。とてもわかりやすく腑に落ちました。いっしょに観た高1の息子も納得していて、未来の世代のためにエネルギー転換が私たちの使命だと再確認できました。
- 講演では、大変率直にわかりやすくお話しいただいて、心に響きました。福島の原発事故については、事故前も事故後も福島の方たちがさまざまに犠牲になってきたにもかかわらず、福島で作った電力を福島の方が使用していなかったことに愕然としました。また、首都圏に住む私は恩恵を受けながら、震災までその事実をまったく知らずに過ごしてきたことに本当に申し訳ない気持ちです。これから生きていく若い世代のためにも、原子力発電の恩恵を享受してきた我々世代が、原発をとめなければいけないと考えます。
- 樋口先生のお話を直接聞くことができ、とても良い機会となりました。親から聞くよりも息子には説得力があり、本も熱心に読んでいます。小原監督が映画を作ってくださったお陰で、たくさんの人が同じ思いを共有することができています。大切な人ふたりに伝えたいと思います。ありがとうございました!