「生きづらさを抱えながらも自分らしく地域の中で暮らす」を開催しました
12月13日、オンラインにて、一般社団法人Omoshiro代表理事の勝呂ちひろ氏を講師に迎え、「生きづらさを抱えながらも自分らしく地域の中で暮らす」を開催し、73名が参加しました。
「何に困っているかわからない」から始まった親子まるっと伴走支援
横浜市にて生きづらさを抱える親子への「親子まるっと伴走支援」を実施しているOmoshiro。そのスタートは、ある女の子が発したひと言「何に困っているかわからない」がきっかけでした。自宅の床一面にあふれた荷物、うつ症状により昼夜逆転している母親という、困っていることがたくさんありそうな家庭にもかかわらず、「何が困っている?」に対するその子の返事は「わからない」だったのです。「なぜ、この子はそう話したのか」や「この子のくらしや背景はどうなっているのだろうか」ということに思いを巡らせたことが「親子まるっと伴走支援」の始まりだったと勝呂氏は話し始めました。
そして、親子の声を聞くなかでわかったことは、じつは子どもだけではなく、親自身も何に困っているかわからない状態だったそうです。このような状態で支援者がいくら親に何に困っているかを尋ねても、親はどう話せばよいのかわからず、だれかと話すことが嫌になり、その結果、親子が孤立するという課題が見えてきました。さらに、だれもその親子のそれぞれのくらしをまるっと知っている人がいないことや、親と子どもで支援の窓口・制度が異なり、同じ話を何度もしなければいけないという課題も浮かび上がりました。「福祉のサービスはつなげて終わりではありません。一人ひとりがその親子に対して自分ごとになり、つなげるのではなく、つながる支援が大切です」と話す勝呂氏。「つなぐではなくつながる」に加え、親子の間で願いや希望の「対話」ができるように「伝える」「伝わる」の練習もサポートしているとのことです。
講師 勝呂ちひろ氏
講演会の様子
子どもの声を聞き、私たちができることを考えよう
家族にケアを要する人がいる場合に、おとなが担うようなケア、責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートを行っている18歳未満の子どもをヤングケアラーといいます。家族のケアをする子どもたちは、「家族をお手伝いしていてえらい」と捉えられることがあります。しかし、子どもたちが子どもらしくていい時間は有限です。それをおとなが本気で守ろうとし、子どもの声にならない声を聞こうとしているかは、社会とおとなで考え続けていく問題だと勝呂氏は話されました。
「子どもの声にならない声を聞くために「見ようとして見る、知ろうとして知る」ことが大事です。それにはその家族が大事にしていることや価値観を知って寄り添うこと、自分と相手の感じ方には違いがあることを大切にしながらかかわることが必要です。伝える・伝わるは、私たちも練習です」と締めくくった勝呂氏の言葉に、私たちもできることを考えていきたいと思う講演会となりました。