「子どもの貧困と居場所づくり」を開催しました
2月16日、オンライン講演会「子どもの貧困と居場所づくり」を開催し、134名が参加しました。
今回の講演会では、家や学校に居場所がない子どもたちに寄り添う支援について、100以上の居場所づくりにかかわってきた、こどもソーシャルワークセンター理事長、幸重忠孝氏からお話いただきました。
日本の子どもたちがおかれている現状
現在の日本は、貧困や虐待、ヤングケアラーなどさまざまな困難を抱え、支援を必要とする子どもたちが多く、その数はコロナ禍でさらに増加しています。
幸重氏は子ども達が抱える困難について、動画を交え紹介されました。貧困は虐待に大きな影響をおよぼしますが、日本のような相対的貧困は表面化しにくく、通報された場合にも、里親や施設で養育される児童は非常に少ないとのこと。「児童相談所に通報して、魔法のように解決するわけではない。多くはその家庭で生きていくしかない」現実が語られました。
一人ひとりの子どもに寄り添う
社会を変える必要があるが、明日明後日に変えることはできない。家庭が経済的に苦しくて気の毒なのではなく、できることがあるのではないか。幸重氏はその思いから、10年ほど前から地域ボランティアと連携したケア型の居場所を運営し、自身も活動されています。
そこでは、一人ひとりの子どもに寄り添うことを大切に、日に少数の子どもが地域ボランティアとともに過ごします。「子どもをたくさん集めるとにぎやかで楽しそうに見えますが、家庭や学校がしんどい子どもたちは、特別なことをするのではなく、家庭でだらだらするように過ごします。少数でよいのです。」と話され、参加者からは「やっと心に寄り添う活動を見ることができた思い」などの声が聞かれました。
幸重氏が理事長を務める<こどもソーシャルワークセンター>
待ったなしの現状、できるところから
続いて支援が必要な子どもを見つけ、センターに通えるまでの道のりや、子どもが成長したあとの課題、オンラインでの取り組み事例などを具体的に紹介。「子どもたちを支えるためには、大きなことではなくとも、声をかけるなど、子どもを見守るおとながいることが“地域の居場所”になる。そういうところから始めましょう」と締めくくられました。
質疑では、活動内容、ボランティア、運営に対する質問や、「自分にもできることがあるのではと勇気をもらえた」など、自ら行動しようと思われる多くの声が寄せられました。
参加者の感想から
- とても有意義でした。現在の日本は先進国といえない、いちばん大切な子どもたちの命も守れない国になってしまった。困窮に陥っている子どもたちが、講師のようなすばらしいおとなと出会うことがひとつの救いの道。成長しなくてはいけないのは私たちおとなであると思いました。
- 絶対的貧困と相対的貧困すら知らず、どれだけ社会の現状を知らないかを知ることができました。子どもたちは社会と未来の宝。子どもを家庭だけで育てる時代は限界と感じました。幸重さんのような場所が増えるべきと思います。同時に親も責められることなく、気軽に助けを求める場所も必要だと思います。そのために自分にも何ができるか考えていきたいと思いました。
- 大変参考になるお話をありがとうございました。子どもたちの状況に心が痛くなりました。読まれた作文は涙なしに聞くことができませんでした。今回の講演を聞いて、ほんの小さなことからでも私にできる何かで力になりたいと思います。
- この日本で、そんなたくさんの子どもたちが助けを求めていること。ショックでした。
- 幸重さんのお話を聞いて、行動する取り掛かりが見えた気がします。小さなことでもいいので何か自分から行動してみようという気持ちになりました。
- わかりやすくよかったです。地域でスペースを開いていますが、非常にたくさんの示唆をいただいたと思います。状況は待ったなしと実感しています。
<講演内で紹介されたアニメ動画>
◇オレンジリボンズS’ (子どもを虐待から守る次世代育成プロジェクト)
これから親になる学生たちに、いち早く子どもの虐待について学んでもらうため作成された動画。
<講演会で紹介された本>
『みんなはアイスをなめている』安田夏菜作 講談社
『まちの子どもソーシャルワーク』幸重忠孝・村井琢哉著 かもがわ出版
<深夜のネットアウトリーチ、ピア相談員メンバーの成長記録>
深夜のネットアウトリーチ:こどもソーシャルワークセンターの取り組みのひとつ
◇動画:ピア相談員みくの物語(YouTube に飛びます)
◇動画:ピア相談員かなえの物語(YouTube に飛びます)
~この講演会はパルシステム共済連「たすけあい活動助成金」を使用して開催しています~