「自分らしく生きる『ダブルマイノリティとは?』」LGBTQ学習会を開催しました
12月5日に新横浜本部で、「ともに生きる」をテーマにLGBTQ(★1)の学習会を開催しました。当日は組合員および一般の方、職員や理事を合わせて45名が参加されました。
今回は手話講師の菊川れんさんを講師に、ろう者とトランスジェンダーのダブルマイノリティ(★2)であるご自身の体験談を交えてお話をしていただき、手話通訳の方に音声でお伝えいただきました。
手話は言語で、LOVEに違いはない
最初に普段のお仕事や活動などご自身の紹介をされた菊川さん。海外旅行が趣味ということで、旅行中にあった出来事を手話とともに分かりやすいジェスチャーや表情を交えながらお話をされて、参加者のみなさんは菊川さんのお話に引き込まれている様子でした。
菊川さんは現在、手話講師とLGBTQに関する活動をされていますが、ご自身もマイノリティの壁や苦悩があったと語られました。
菊川さんは幼いころ、まだろう者に対しての理解が遅れていて、デフファミリー(★3)である家族と手話で会話をしているのを見られるのが恥ずかしく、家族と距離を取っていたこともあったといいます。しかし19才の時に手話の先生と出会い、先生の「手話は言語」という言葉が菊川さんの手話への意識を変えました。「手話は話せない代わりのジェスチャーで恥ずかしいと思っていましたが、日本語や英語と同じように「言語」なんだと考えたらすとんと落ちて、手話で話すこと、自分がろう者であることを誇りに思うようになりました」
高校時代には先生への告白に理解を得られず、一時は死を考えてしまった経験もあったそうです。苦い思い出を抱えていた菊川さんですが、アメリカの大学の授業の中で「愛は人それぞれでそこに間違いはない」と言った先生の言葉に衝撃を受け、自分に自信をもつことができたと語られました。
自己紹介される菊川さん
「LGBT」と「SOGI」
自身の体験談を語られた後、LGBTとは何かというお話に移りました。
「現在の日本では性的マイノリティは13人に1人いると言われています。これは数値にすると日本人口の9%。左利きの人やAB型の人が10%と言われているので、ほとんど同じくらいの割合で性的マイノリティの人がいることになります。しかし、なかなか言い出せない方が多く、表面化しないのが現状です。90%以上は言えない人たちで、私のようにカミングアウトできている人はほんの一部です」
家族問題や生活面の不安を抱える人が多い性的マイノリティの現実を語られた菊川さんはLGBTのようにカテゴリー分けをしない、新しい言葉「SOGI」を説明されました。 「SOGI(ソジ)はあらゆる性をまとめた性自認や性的指向のことです。多数派と違うという意識が差別につながることのないよう、ぜひみなさんに知ってもらいたい言葉です」
「SOGI」(ソジ)について説明されました
社会の動きと自分らしく生きる夢
少しずつ社会のなかでもLGBTに関する取り組みや制度が出てきていることについても触れられました。菊川さんいわく、パートナーシップ条例は、病院の家族のみの手続きなどが行えない事や、全国的なものではない事などまだまだ問題が多く、同性婚が認められるよう活動を続けられています。
一部の企業では、結婚ができないパートナーに結婚の手当てや祝い金を出すなどの制度をつくった事例や、ALLY(アライ)(★4)が企業内で活動している事例などを紹介され、マイノリティと社会について以下のように語られました。
「私はマジョリティ(★5)がマイノリティを助けているのではなく、マイノリティがマジョリティを助けていると考えています。マイノリティの生活は確かに不便がありますが、マイノリティがいるからこそ、私たちは社会のさまざまな不便に気付いてよりよく発展していくきっかけになるのだと思います。マジョリティがマイノリティから学べることはたくさんあって、互いに助け合う、相手を想って考えることは自分の成長にもつながっていくんです」
最後に、菊川さんは手話のプロ通訳者育成、ろうや性的マイノリティの人を助けるために講演や本などで発信を続けたいこと、自分ができることを模索しながら社会を変えていく活動を続けたいと、自分らしく生きる夢のお話で講演を締めくくられました。
自分らしく生きる3つの夢を語られていました
参加者からは「当事者から直接話をきけて良かった」「性的マイノリティの人が9%と聞いて驚きました」「菊川さんの手話を直に見ることができ、とても嬉しかったです」などさまざまなお声をいただき、マイノリティについてみなさんが多くの関心を寄せられていることを感じました。
当組合ではこれからも「ともに生きる」ため、人権問題やマイノリティなどを含めた平和を考える取り組みを行っていきます。
【用語解説】
★1「LGBTQ」……L(レズビアン)は女性として女性が好きな人、G(ゲイ)は男性として男性が好きな人、B(バイセクシュアル)は同性も異性も好きになる人、T(トランスジェンダー)は心と体の性に不一致を感じる人、Q(クエスチョニング、もしくはクィア)の略称。クエスチョニングは性自認・性的指向が揺れ動いていたり、定まっていない人。クィアは広くさまざまな意味があり、性的マイノリティの総称としても使われます。
★2「ダブルマイノリティ」……複数のマイノリティがある人のこと。マイノリティは社会的に少数派として位置づけられる人々のこと。
★3「デフファミリー」……全員が聴覚障害(特にろう者)である家族のこと。
★4「ALLY(アライ)」……性的マイノリティの人をサポートする異性愛者、当事者でない人々のこと。
★5「マジョリティ」……多数派、過半数の意味の用語。マイノリティの対義語として扱われる。